天井駆動キャビティー
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天井駆動キャビティー

天井駆動キャビティーは有名な粘性非圧縮流体流れのベンチマーク問題です[79]。 問題となる形状は図26に示す通りです。 扱うのは滑りなし条件が課せられた3つの剛壁と接線単位速度を持った動く天井からなる正方形キャビティーです。 関心があるのはレイノルズ数400での流速と圧力の分布です。

図26: 天井駆動キャビティーの形状
\begin{figure}\begin{center}\epsfig{file=lidgeo.eps,width=10cm}\end{center}\end{figure}

図27: 天井駆動キャビティーのメッシュ
\begin{figure}\begin{center}
\epsfig{file=lidmesh.ps,width=9cm}\end{center}\end{figure}

入力デッキは以下のようになります(このデッキはCFDテストパッケージとしても利用可能でファイル lid400.inp と名前が付けられています):

** 
** 構造:天井駆動キャビティー** テスト対象:非圧縮、粘性、層流、3次元流体
**
*NODE, NSET=Nall
       1,5.000000000000e-01,5.000000000000e-01,0.0
...
*ELEMENT, TYPE=F3D8, ELSET=Eall
     1,     1,     2,     3,     4,     5,     6,     7,     8
...
*SURFACE, NAME=SOLIDSURFACE
40, S2
...
*MATERIAL,NAME=WATER
*DENSITY
1.
*FLUID CONSTANTS
1.,.25E-2,293.
*SOLID SECTION,ELSET=Eall,MATERIAL=WATER
*INITIAL CONDITIONS,TYPE=FLUID VELOCITY
Nall,1,0.
Nall,2,0.
Nall,3,0.
*INITIAL CONDITIONS,TYPE=PRESSURE
Nall,1.
**
*STEP,INCF=5000
*STATIC
*BOUNDARYF
** BOUNDARYF based on fixz
1, S3, 3,, 0.000000
...
** BOUNDARYF based on in
1601, S1, 1,, 0.000000
...
** BOUNDARYF based on in
1601, S1, 2,, 1.000000
...
** BOUNDARYF based on in
1601, S1, 3,, 0.000000
...
** BOUNDARYF based on wall
40, S2, 1,, 0.000000
...
** BOUNDARYF based on wall
40, S2, 2,, 0.000000
...
** BOUNDARYF based on wall
40, S2, 3,, 0.000000
...
*BOUNDARYF
1600, S3, 8,8, 1.000000
*NODE FILE,FREQUENCYF=5000
VF,PSF
*END STEP

この問題は本質的には2次元ですが、単位長さ分の厚みを持つ3次元問題としてモデル化されています。 これはCalculiXでは2次元流体機能が利用できないためです。 メッシュ(2次元へ投影したもの)は図27に示すとおりです。 メッシュは8節点のブリック要素で作成されています。厚み方向には1要素の層が入れられています。 計算結果は厚み方向には変化しないのでこれで十分なのです。 入力デッキは節点座標と要素形状の定義から始まります。 流体体積要素の要素タイプはCがF(Fluid)で置き換えられている以外は構造要素と同じです(例.F3D6)。 固体表面に含まれる面は次にリストアップされています。面は要素番号と内部面番号で定義されます。 固体表面とは流体と接する面、つまり粘性が存在し、固体表面に隣接する流速ベクトルが表面自体の速度と一致する面のことです。 固体表面は全てSOLIDSURFACE(大文字である必要はありません)という名前の付けられた SURFACE 定義に集められています。

物性定義は密度、熱容量、粘性係数からなります。密度は1に設定されています。 熱容量と粘性係数は *FLUID CONSTANTS キーワードの下で入力されています。 定常状態の計算なので熱容量は不必要で、ここでは何の効果も生みません。粘性係数の値はレイノルズ数が400となるように設定されています。 レイノルズ数は、流速と長さを掛け、それを動粘性係数で割ったもので定義されます。 天井の速度は1、長さは1なので密度が1の場合には動粘性係数と粘性係数は一致します。 従って動粘性係数の値は1/400になります。物性は *SOLID SECTION カードによって要素に割り当てられます。

この問題の未知数は流速と静圧です。 熱境界条件は設定されていないので温度は無意味です。 流速と圧力の初期値は全て *INITIAL CONDITIONS,TYPE=FLUID VELOCITY カード、*INITIAL CONDITIONS,TYPE=PRESSURE カードで設定されています。 流速の初期条件は各自由度に対してそれぞれ指定する必要があることに注意してください。

ステップは通常 *STEP キーワードで始まります。 ただし流体計算では増分の最大数はパラメーター INCF によって決定されます。 定常計算ではキーワード *STATIC が使用されます。時間増分値がこの行の下に記載されていない場合、処理が安定するように増分サイズは自動的に選択されます。 流体系さんの境界条件は面上に定義され、*BOUNDARYF カードを使用して設定されます。 非一様(つまり非ゼロ)な境界条件はステップ内で定義されなければならないことに注意してください。 一様な場合はステップ内でも、ステップの前でも定義することが可能です。 ここでは境界条件は全てステップ内で定義されています。 境界条件には固定壁での速度ゼロ、天井でのY方向速度1、側壁でのZ方向速度ゼロが含まれています。 要素1600の面3に対しては圧力1が設定されています。CFDでは圧力の境界条件は全ての速度成分が設定されていない面にだけ設定できます。 従って今回の例では壁や天井に含まれる面に圧力を設定することはできません。

ステップの終わりには各節点に対する流速VF、静圧PSFの出力指定があります。 出力頻度は FREQUENCYF パラメーターによって5000と定義されています。 つまり結果は5000増分ごとに出力されます。

図28: 天井駆動キャビティーの流速のY成分
\begin{figure}\begin{center}
\epsfig{file=lidvelx.ps,width=9cm}\end{center}\end{figure}

図29: 天井駆動キャビティーの流速分布
\begin{figure}\begin{center}
\epsfig{file=lidvel.ps,width=9cm}\end{center}\end{figure}

図30: 天井駆動キャビティーの圧力分布
\begin{figure}\begin{center}
\epsfig{file=lidpre.ps,width=9cm}\end{center}\end{figure}

Y方向(つまり天井接線方向)流速分布は図28に示すとおりです。 最小値(-0.33)とその位置は[79]の結果と非常によく一致しています。 図29には流速ベクトルのプロットが示されています。 天井近くには大きな勾配があり、左下と右下は死角になっています。 圧力のプロット(図30)では中央部の大きな渦と左上の隅に低圧力の領域があることがわかります。 右上の隅には流速のY成分のよどみ点があり、かなり高い圧力が高いことがわかります。


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guido dhondt 2016-03-08