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第十八類 カム Cam.

所要の機械的運動はカムを用いて容易に為し遂げ得らるるを以て複雑なる機械的運動又は特種作用の機械には多くカムを利用す。カムは概して摩擦消耗仕事多きが故にその減摩装置を要す。カムを油中に作用せしむるが如き又カムにコロを触れしむる如きはその一例なり。本類には類別上カムの作用に似たる機構をも集めたり。

410. カム(其一)

図. カム1

カム 1 は凹部 4 を有する円板。カム 1 の一回転毎にコロ 3 は凹みに落下す。テコ 3 はカムの一回転中急に振動して後静止する運動を為す。コロ 2 はテコ 3 の端の二股に挟まれてその軸上に回転する小車にして 減摩装置なり。

411. 同(其二)

図. カム2

カム 2 の一回転はロッド 3 を三回上下動せしめ、テコ 8 を三回振動せしむ。4, 7 はコロにして之がカム 2 の周と触れて転動するにより減摩装置なり。一般に板の周囲に特種形状を与え被動者と動かすカムを板カム Plate Cam と称す。

412. カムと胴搗 Cam and Stamper.

図. カムと胴搗

周囲に三個の突起 6, 7, 8 を有するカム 2 の一回転が胴搗(スタンパー)3 を三度び跳ね上ぐ。突起は之をワイパー Wiper はタペット Tappet と称す。粉砕機、米搗機等に応用せらる。

413. 回転斜板 Swash Plate.

図. 回転斜板

平円板 3 は縦軸 1 に斜に取付らる。ロッド 4 の下端のコロ 3 は 2 に接す。軸 1 の回転はロッド 4 に上下運動を与う。軸 1 が等速回転を為さばロッド 4 は単弦運動を為す。

414. 剪断機 Shearing Miachine.

図. 剪断機

カム 2 の回転によりてハサミ 4 は働く。ハサミの柄は刃に比して長きにより強大なる剪断力を生ず。金属板又は丸棒、角棒等を剪断す。

415. スタンプ Stamp.

図. スタンプ

四個のワイパー 2 を有するカム軸の一回転はスタンプ 3 を四回跳ね上げる。古来用いられ今は廃れたる足踏用米搗機はこの仕掛なり。杵 6 の上に石を取付けてく力を大にす。

416. 円板ピンとクランク Disc Pin and Crank.

図. 円板ピンとクランク

2, 2, 2 は円板 1 より出でたるピンにしてその回転によりてピン 2 はテコ 4 を下ぐるにより杵 5 はその都度上がり 2, 4 が外づるるや 5 は落下す。即ち 5 は 1 の一回転に三回 8 を打つ。

417. 三角カム Triangular Cam.

図. 三角カム

カム 2 が一回転を為す間に枠付桿 3 は一回の上下運動を為し且各その終端において静止す。即ち 1 の連続一回転は上下の極において休む往復運動を 3 に与う。

418. ハート・カム(其一)Heart Cam.(心臓カム)

図. ハート・カム1

ハート・カム 2 の等速一回転はその軸 1 の軸線と直角に交わる直線上に下端が上下するロッド 3 に等速往復運動を与う。心臓に似たるを以てハート・カムの名あり。5, 6’, 7’, 8’, 10 はアルキメデス螺線 Archimedian Spiral。ロッドの上がる距離を揚程と称す。

419. 同(其二)

図. ハート・カム2

(418) においてはロッドの先端がカムの縁に接しつつ滑る間の長きために摩擦消耗仕事大なり。されば消耗仕事を軽減する目的にて上者と同一作用をなさしめんには (418) におけるカムの周囲の各点を中心としコロ 9 の半径を以て無数の円弧を描き之に接して図示の如き曲線を描きカム 2 を得。

420. 同(其三)

図. ハート・カム3

コロ 5 は何れもカム 2 に触る。ハート・カム 2 が等速に回転するときは上のテコ 3, 4 及び下のベルクランク 3, 4 は何れもやや等速なる振動を為す。(419) と同様の描法なり。

421. インボリュート・ハート・カム(其四)Involute Hart Cam.

図. インボリュート・ハート・カム

ロッドの先端 5 の上下運動の直線はカム軸 1 と直角なるが軸線と交わらざる位置にあり。この場合ロッド 3 がハート・カム (118) と同様の運動を為す。9’, 8’, 7’, 6’, 5 及び 5, 12’, 11’ 10’, 9’ は円のインボリュート曲線なり。あるいは之に類する曲線なり。

422. 対数曲線テコ(其一)Logarithmic Spiral Levers.

図. 対数曲線テコ1

両接触面 3, 4 は滑りなきにより摩擦消耗仕事なし。天秤の接触、テコの接触等に応用せらる。曲線 3 は中心 1 の対数曲線にして動径とその端に接する接線と為す角が定数なる性質あり。4 も亦中心 2 なる同一曲線なり。3, 4 の接点が直線 13 上にあることが両点の滑りなく接触することの一性質なり。

423. 同(其二)

図. 対数曲線テコ2

図の如き線金裁断器に応用せんに両テコの接触部に滑りなければこの部分に摩擦消耗仕事なし。6, 7, 8 等の何れかの穴へ線金を貫通しハンドル 5 によりてアーム 1 を廻せば線金は剪断せらる。

424. 対数曲線カムとワイパー Log. Spiral Cam and Wiper.

図. 対数曲線カムとワイパー

曲線 66 は中心 1 の対数曲線にしてその接線と動径の為す角はロッド 55 の軸と直線アーム 77 の為す角に等し。軸 1 の揺動はロッド 4 を上下動せしむるがその場合 2, 3 は少しも滑べらず。汽機、ガスエンジン等の弁の開閉装置等に応用せらる。本機構は (422) の変態なり。即ち同図において曲線 3 に対する中心 1 が遠距離にある場合と考えられ得。

425. 歯車掛外し装置 Throwing out and in of Gear.

図. 歯車掛外し装置

歯車 7 の軸 1 を支うるメタル 2 は枠 9 の溝内に摺動す。メタル 2 より突起するピン 3 はカム 4 の溝に入る。図の如き位置においては歯車 7, 8 は組合うが取手 6 を矢の方向に廻せば外づる。

工作機械の力輪装置等に応用せらる。

426. 逃し止(エスケープメント)Escapement.

図. 逃し止

三個の腕 2, 3, 4 を有する軸 1 の一回転は枠付ロッド 7, 8 を左右に三回往復せしむ。5, 6 はパレット。一、三、五等の奇数のアームを軸 1 に取付くるときは軸 1 の一回転によりて枠は腕の数の往復運動を為す。腕付軸 1 が自ら右廻せんとする場合に枠が左右に往復運動を為して腕を一つずつ送る仕掛は第二十類に属する機構となる。

427. タペット・テコ弁運動 Tappet Lever Valve Motion.

図. タペット・テコ弁運動

ロッド 1 が右方に動きて鍔 2 がタペットの右枝 5 に当たるや弁棒 8 を急に左方へ動かす。即ちロッド 1 が左右往復運動の両端においてロッド 8 は急に動く。456 が英字Tに類似するによりティー字テコ運動とも言う。ポンプ、ロック・ドリル等に応用せらる。ポンプに応用せしものをミッヒ弁テコ “Misch” Valve Tappet と言う。

428. ベルクランクとピン円板による平板の往復運動

図. ベルクランクとピン円板による平板の往復運動

平板(テーブル)9 はその側にピン 8 を出し下部にパレット 4 を出し左右に往復運動を為す。円板 2 の盤面より突出せる二個のコロ附ピン 3, 3 あり。ベルクランクの下枝 5 はピン 3 に上枝 6 はピン 8 に当る。2 の一回転は 9 に二回の往復運動を与う。

429. 汽機の逆転装置 Simple Reversing Gear for Steam Engine.

図. 汽機の逆転装置

7 を上げてピン 8 より外づすときはエキセン 3 の運動は弁棒 6 に伝わらず。エキセンの円板 3 は軸より出でたるピン 2 と組む。軸 1 が右回転すとせよ。7 を上げてテコ 10 にて 6 を動かし汽機を逆転せしむ。而して後 7, 8 を組ましむればそのまま回転を継続す。この場合ピン 2 は 3 に対し図示の位置よりも約 180° 左廻して逆回転の位置に移る。更に正回転に復せんには前者と同様のことを繰返すべし。

430. ポンチ盤 Punching Machine.

図. ポンチ盤

コロ付カム 2 の回転は大なるテコ 4 を振動せしむ。図の如く鍵 8 を差込むときはパンチ 12 は鉄板 15 を穿孔す。8 を抜き去れば 7 は 9 を押さざるによりパンチ 12 は作用せず。金属板 15 の穿孔すべき位置を正しく 12 の直下に移すまでは 8 を抜きさて穿孔せんと欲すれば図の如く 8 を差込む。

431. カム歯のポンチ Double Toothed Cam and Lever Combined.

図. カム歯のポンチ

テコ 7 を押す力は 8 における強大なる力と化す。本図は鉄板穿孔に応用したる場合を示す。

432. 正面カム Face Cam.(其一)

図. 正面カム1

軸 1 の端のカム 2 はコロ 3 を端に有するテコ 4 と組む。バネ 7 はテコ 4 を下方に引き付く。カム 2 の回転によりてテコ 4 は特種の振動を為す。

433. 同(其二)

図. 正面カム2

周囲に鋸歯状の凸凹を有する冠輪カム 2 が回転するときはロッド 3 激しく振動す。ただし圧縮バネ 7 は鍔 4 を押すにより 3 の左端が鋸歯と外づるるや否やロッド 3 を左方へ跳ね返す。

434. 同(其三)別名 スクロール・カム Scroll Cam.

図. 正面カム3

錘 6 によりてテコ 4 の左端のコロはカム 2 に触る。カム軸 1 の回転はテコ 4 に急速振動を与う。軸 1 を高速に回転する場合には 6 の代わりに強き張力バネを用いて下より 4 の右端を引張る。

435. 確実運動カム(其一)Positive Motion Cam.

図. 確実運動カム1

カム 2 は回転の如何なる位置においても左右のコロ 4, 4 によりて緩みなく挟まる。カム 2 の回転はロッド 1 に必ず既定の往復動を与うるほか、他の運動を為さしめず。故に確実運動カムの名あり。

436. 同(其二)

図. 確実運動カム2

ロッド 3 の上下の剣先 5, 6 は回転の如何なる位置にてもカムを緩みなく挟む。カム 2 の一回転においてロッド 3 は四分一回転にて上り次の四分一回転は休息し次の四分一回転にて下り次の四分一回転は休息し、再び前者を繰返す。カムは錘又はバネ等の補助を借らずして必ずロッドを動かす。織機に応用せられ綜絖カム Heddle Cam の別名あり。

437. 同(其三)

図. 確実運動カム3

軸 1 取付く二枚のカム 2 と 3 にアーム 4 の端が必ず触るる様にす。然るときは軸 1 の回転はアーム 4 に特種の運動を与う。カム軸 1 の回転に当りアーム 4 は他力によりて自由の運動を為す能わず。

438. 同(其四)

図. 確実運動カム4

円板面に刻める波状溝 2 にテコ 4 の端より突起するピン 3 が入る。

円板カムの回転によりてテコ 5 は激しく振動す。

439. 同(其五)

図. 確実運動カム5

円板に刻める二条の溝にはそれぞれ 7, 6 の端より突出するピン 5, 4 が入る。この円板カムの回転は被動者 6 及び 8 に特種運動を与う。裁縫機(ミシン)等に応用せらる。

440. 同(其六)

図. 確実運動カム6

カム 2, 3 はそれぞれ同軸固定せる相等しき平歯車 4, 5 と共に回転す。両カムはコロ 6, 7 を挟みつつ回転しテコ 8 に上下両端にて休む上下運動を与う。

力織機に応用せらる。

441. 渦巻板(プレーン・スクリュー)Plane Screw.(其七)

図. 渦巻板

渦巻状の溝にロッド 4 の先端のピン 3 が入る。

軸 1 の等速回転はその回転の方向によりてロッド 4 を等速に上あるいは下に動かす。別名平ネジ(フラット・スクリュー)Flat Screw と称す。

442. 溝付ハート・カム(其八)Grooved Heart Cam.

図. 溝付ハート・カム

心臓形の溝 2 の内をテコ 4 の先端のコロ 3 が緩みなく動く。カム 2 の等速回転はテコを等速に振動せしむ。(420) と同作用なり。確実運動カムなればテコ 4 は強き力に抗して運動す。(419) と比較せよ。

443. 溝付円筒カム(其九)Grooved Cylindrical Cam.

図. 溝付円筒カム

左図において円柱面 2 に刻める溝にテコ 4 の先端のコロ 3 が緩みなく運動す。カム 2 の回転によりてテコ 4 が運動する有様は恰も右図の板カムと同作用なり。

444. 円筒カム(其十)Cylindrical Cam.

図. 円筒カム

円柱面 2 に二周せる溝あり。ロッド 3 より突起せるピン 4 がこの溝に入る。軸 1 の二回転に対してロッド 3 が一往復運動を為す。4 がイロハニホヘトチリヌルイの順に溝を間違なく通過するには (455) 及び (456) に説く舟形片をピン 4 に附る心要あり。

445. 正方形を描く四運動カム Four Motion Cam describing the Square.

図. 正方形を描く四運動カム

5 は固定の枠にして枠 4 はその内を上下に滑べり枠 3 は 4 内を左右に滑り得。カム 2 の回転は枠 3 上の任意の点 6 に正方形の運動を与う。

裁縫機の送り仕掛に応用せらる。

446. ギヤ・スタンプ(ギヤ胴搗)Gear Stamp.

図. ギヤ・スタンプ

歯車 4 の噛合い描きるや杵 2 は急に自由落下す。1 が回転してまず 6 が 5 に当たりて 2 を上ぐるために 3, 4 の歯が順々に組みて 2 を上ぐ((224) のスパー参照)。第十類に編入するものなれども (412) などなど共にここに記録せり。

447. 球面カム Spherical Cam.

図. 球面カム

水平軸にてその位置にて回転する球 1 の表面に幅一定なる特種曲線の溝 2 を穿つ。軸線が球の中心を通過する垂直軸にてその位置に振動する弓状片 3 の中央より突起するピン 4 は溝 2 に入る。1 が回転すれば 3 は特種の振動を為す。

448. 直線動カム(トランスレーション・カム)Translation Cam.

図. 直線動カム

特種の形状の山形カム 1 は左右に往復運動を為す。因て之と組むコロ付ロッド 2 は特種の上下運動を為す。

449. 自動杭打機 Releasing Hook used for Pile Driving.

図. 自動杭打機

左右の柱を案内として上下動する槌 9 と二つの鉤 2, 2 が噛みて縄 7 によりて上ぐ。而して 4, 4 が穴 6 に入り込むや狭めらるるにより 2, 2 は開きて槌 9 は自由落下し其の際杭頭を打つ。

450. エキセン・カムと円板 Eccentric Cam and Disc.

図. エキセン・カムと円板

両並行軸 1, 2 はその軸線少しく離る。

図の位置より軸 1 が軸 2 を約半回転せしめ得るがその終に近づくや 5, 7 の噛合が外づれ(このときピン 6 は左に移りて 5 の位置を占む)それ以後軸 1 は半回転し(この間軸 2 は静止す)て再び図の如き位置に復す。斯くして軸 1 の連続回転は前半回転は回転し後半回転は休む様に軸 2 に伝動す。

451. ジャンピング・モーション(其一)Jumping Motion.

図. ジャンピング・モーション1

カム 2 は軸 1 上に遊動す。ピン 3 はカム 2 の面より突起しピン 4 は軸 1 より突起す。コロ 5 を有するテコ 6 をバネ 7 が押す。軸 1 の左回転によりてピン 4 は 3 を押してカム 2 を廻す故にテコ 6 を上げ得れども図示の位置より少しく進むやカム 2 は離れて軸 1 を滑り、為めにテコ 6 は自由落下す。斯くして 4 が再び 3 に接するやカム 2 を廻し前者を繰返す。

452. 同(其二)

図. ジャンピング・モーション2

左図は上者と同一の組合なるが外観を異にす。

453. コーリス弁装置 “Corliss” Valve Gear.

図. コーリス弁装置

テコ 7 は弁軸 1 上に遊動しリンク 8 が之を左右に振る。爪 4 は揺腕 5 と一体を為す。1 の端にリンク 2 が取付く。カム 6 は 1 上に遊動しリンク 9 にて調速機に連なる。リンク 2 に取付くロッド 3 は常に下方に引かる。(Dash-Pot の仕掛)左図において 4 が 3 を掛けて 7 を左方へ振り軸 1 を左に廻す。この時、弁開きて汽機のシリンダーに蒸気入る。而して揺腕 5 の先端がカム 6 の凸部に触るるに至らば 4 は 2 より外れて 2 は急に右廻し右図の如き位置に帰る。このとき弁閉づ。9 が上がれば 4 の外づるる時期を早める。

454. カム利用の革寄せ Shifter with Sliding Cam.

図. カム利用の革寄せ

ベルクランク 512 の上枝 5 は二股となりて調帯 6 を挟み下枝にはピン 2 が突起し之が滑り子 4 のへ字形の溝に入る。4 を左図に寄せるときは革寄せ 5 は点線図に示す如く右に傾く。

455. 二回転の間被動者が端にて休むカム Cylindrical Cam using Switch.

図. 二回転の間被動者が端にて休むカム

船形片 2 は円筒カムの溝の中を動く。スイッチ 3 を押せば左に寄るが放せば圧縮バネにて直に右に復す。円柱カムが回転中 2 はカムに対して関係的にヲイロハ(左図)ハニホヘト(中央図)トチリヌ(右図)の道順に運動するが故に 2 は右端においてカムの二回転中休む運動を為す。ただし 2 は (444) におけるピン 4 に取付く。

456. 二廻りカム Two Turn Cam.

図. 二廻りカム

4, 5 はベルクランク、7, 8 は共に動くベルクランク、6 及び 9 はリンク。円板 2 にはイロハニホヘトチイの二巻せる曲線の溝を穿ちて之の内に中央をピンにて蝶番せる舟形片 3 が運動す。カム 2 の毎二回転にてテーブル 10 は左右両端において休み且往復運動がカムのわずかなる回転角にて仕遂げらるる運動を為す。印刷機に応用せらる。

457. カムの連動 Aggregate Combination of Cams and its Followers.

図. カムの連動

テコ 6 の右端 15 はカム 3 によりて特種の上下運動を為し同時にベルクランク 84 の上端 14 も亦カム 2 によりて特種の水平運動を為すによりその両運動の合成運動を為す点 11 は所要の運動を為す。例えば図に示せるカムは点 11 が英字Rを書く(第二十八類に属するものなるが便宜上ここに記録す)。

458. 三様に振りを変ずるカム Series of Cams of Varying Throw.

図. 三様に振りを変ずるカム

ベルクランク 9 の腕端より突出する小軸 6 の上に円板状のコロ 7 が遊動し挟片 8 は 7 を挟みてその位置に支う。図の位置にありてはコロ 7 はカム 2 と組むが 8 にて 7 を寄せて 1 又は 3 のカムと組ましめ得べく斯くしてテコ 10 の振動の幅を三様に変じ得。ガスエンジン等に 応用せらる。

459. 反対カム Inverse Cam.

図. 反対カム

クランク 1 のピンを軸とするコロ 2 は軸 3 を中心として振動するカム 4 の特種形状の溝に入る。1 の回転は 4 に特種の振動を与う。斯の如く一般に動者たるべきカムが反て被動せらるる場合に反対カム(インヴァース・カム)の名を与う。(145), (147) 之に類す。

460. エキセンと枠帯付ロッド Yoke Strap and Eccentric Circular Cam.

図. エキセンと枠帯付ロッド

エキセン 1 の一回転は枠付ロッド 2 を左右に一往復せしむ。(80)と同一運動を為す。製作費廉なるにより軽き仕事に使用せらる。力の大なる場合には注油の不充分なるために不適当なり。給油器等に応用せらる。

461. 張り車による調車止め装置

図. 張り車による調車止め装置

並行軸に取付く調車 1, 2 に掛かるベルト 10 を押す張り車 5 のテコ 4 の他端のコロ 9 は歯車列 6.7.8 によりて廻さるるカム 3 と組む。カム 3 の凸部が 9 に触るる間はベルト 10 を張りて 1 は 2 を廻わすがカムの凹部が 9 に触るるときは 10 は緩みて 2 は廻らず。斯くて調車 1 が連続回転する間に 2 は断続的回転をなす。

462. 同転爪によりてリンクを送る仕掛

図. 同転爪によりてリンクを送る仕掛

リンク 5 はその接ぎ目のピン 6 の両端にコロ車を有し之が二本の並行レール上に転がる(図に示さず)。7 は静止カムにて 1, 2, 3, 4 は回転円板 9 にピン接合す。1 はピン 6 を押し始める位置を、4 は外づれんとする位置を示す。回転に伴って次第に 2, 3 が働く((380) を見よ)。

463. テコを急速に動かすカム仕掛

図. テコを急速に動かすカム仕掛

カム 1 の突起部がコロ 3 より外づるるや引張バネ 4 は急速にテコ 2 を引き落す。

464. カムによる爪送り装置

図. カムによる爪送り装置

カム 6 の回転においてコロ 5 の接触が高き部より低き部に移る際爪 3 は退き低き部より高き部に移らんとする際爪 3 は爪車 2 を送る。ただし図には止爪を省く。

465. 芋虫が芋虫車を間欠的に廻す仕掛

図. 芋虫が芋虫車を間欠的に廻す仕掛

芋虫 2 は軸 3 上に空転し得べく其の左端 9 は鍔付スリーブ 7 と噛合接手 (653) を為す。7 とテコ 5 は (654) と同一なり。引張バネ 8 は 5 を右方へ引く。車 1 の面に取付けるカム 4 と 5 の突起 6 と組み得。4 と 6 が触れざる間は軸 3 の回転によりて 2 は 1 を廻すが 4 が 6 を左方へ押し寄する間はクラッチ 9 は外づれて車 1 は廻らず。

466. 軸の一回転中ロッドが上下両極で休息するカム仕掛

図. 軸の一回転中ロッドが上下両極で休息するカム仕掛

カム 3 は円弧 11, 22 より成りその一回転はロッド 4 を上下両極において休息する一往復運動を与う。

467. 歯車と軸の安全取付装置

図. 歯車と軸の安全取付装置

歯車の殻 2 のカム状の一端 7 は軸 1 から突起する丸ピン 3 と当る。4 は圧縮バネ。歯車のトルクが非常に増せばピン 3 は 7 を超え 1 は 2 に対して空転し之によりて歯車又は軸の破壊を免がる。

468. 一条の溝を有する円柱カムが二つの被動棒を反方向に動かす仕掛

図. 一条の溝を有する円柱カムが二つの被動棒を反方向に動かす仕掛

カムの一回転は軸方向に直線運動する棒 2, 3 を全く相反する方向に往復運動せしむ。41, 42 は溝に入るピン。

469. 一周毎に円板スイッチが 90° 廻る仕掛

図. 一周毎に円板スイッチが 90° 廻る仕掛

ピストン 1, 11, 21 は一体をなし圧縮バネ 4 は自由状態において 1 を滑り子 2 に埋める。レール 3 によりて左方へ 2 が滑るとまず固定カム 7 が 21 を上げ、従って 1 は 2 より浮び 1 の下面より突起するピン 5 が抜出で次で固定の廻し手 8 は角点 9 に当りて 1 を 90° 廻す。次で 7 の押上げ描きるとバネ 4 は 1 を 2 内に埋める。このときピン 5 は前の次の孔 6 に差し入りて 1 を正しき位置に置く。次で 8, 21 の接触外づる。

469.1. 二廻り円柱とスイッチ

図. 二廻り円柱とスイッチ

上述の機構を二廻り円柱カムに応用す。円柱カムは中空にしてその内 (469) の 7, 8 を取付たる台 9 を収む。カムが回転して棒 4 のピン 3 が溝イロを通過後円板スイッチ 1 は 90° 回転してニホの路を通ず。斯様にして被動棒 4 のピン 3 がイロハニホヘイの順に進む。即ち円柱カムの二回転において棒 4 は左右極にてカムの半回転だけ休む往復運動をなす。

469.2. 二廻りカム

図. 二廻りカム

図示の位置よりカム 3 が矢の方向に右廻するとコロ 4 はスイッチ 6 を押してイよりロに進む。ただし 6 の尾はピン 17 に当りて 6 は点線の位置に移るが 4 が 6 より難れると引張バネ 16 は 6 を実線図の位置に復せしむ。4 はそれよりハニに進みスイッチ 5 を押してホへに進みトチリを経て始めの位置に帰る。ただしコロが 5 と難れると引張バネ 15 は 5 を図示の位置に戻す。13, 14 はその止ピンなり。カム 3 の二回転はコロ付テコ 7 を其の運動の両端で休息する行程異る二往復運動を与う。